2006年 04月 11日
オススメ |
『陰影礼賛』と佐藤賢一が好きだ。
なんで片方が作品タイトルで、もう一方が著者名なのかというと、谷崎潤一郎のほかの作品を読んだことがないから。
『陰影礼賛』との出会いは中学か高校の教科書だったと思う。当時は装飾過多のキチガイ文章と思っていたが、今になって読み返すとこれがすごい。言葉の意味というものを知らない時分にコレを読まされたことは不幸としか言いようがないが、その存在を知る機会を得られたのは幸福だ。
以下引用。
~その羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色がかろうじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑らかのものを口中にふくむ時、恰(あたか)も室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。~
『陰影礼賛』は晩年の作だから、歳をとってから読めばさらに滋味深く感じられるかもしれない。
もう一方の佐藤賢一は、おもにフランス100年戦争あたりのフランス/ヨーロッパを得意とする歴史小説家なのかな・・・。よく分からない(笑) 史実の隙間を、自分の言葉で埋めていく手法を得意とする作家。並べて登場人物がパワフルで、歴史小説としてだけではなく娯楽小説としても楽しめる作品が多く、文章は平易で読みやすい。テンポのよい弁士の口上を聞いているような心地よさがある。この人の文章の肝は、見知ったはずの言葉が、たまに、思いもよらないかたちで登場するところだ。ジュブナイル小説に『ヴァンパイアハンターD』というのがる。読んだのは小学生のときだったと思う。そこではじめて『だがしかし』という逆接が二つくっついた接続詞を、僕は見た。すごい衝撃だった。テストで書いたら絶対0点だ、と思った。ただ、単なる『だが』と『しかし』よりはるかに強いニュアンスが込められていることは、子供ながらに理解できた。いまでは物語の内容さえ忘れてしまった『D』ではあるが、僕の中では『D』といえば『だがしかし』であり、『だがしかし』を語るにはまず『D』ありきである。話がそれたが、佐藤賢一の小説にはこれに近い驚きがちりばめられている。知っているはずの言葉を、別の角度から再発見する楽しみを与えてくれる作家なのだ。
「何か面白い本知らない?」って聞かれると、大抵このどちらかを勧めている。 ストーリーだけでなく、文章がとても豊かなところがいい。この二つからは、日本語が理解できてよかったな、という快感を味わえる。
で、最近このラインナップに加わったのがGriblockさんの文章。
余計な解説は意味ないので、とりあえずGoだ。
現実の逸話では『ハナミズキ』、ゲームのカテゴリなら『昔話』という作品が、最高にツボなのだがどこにあるかは書いたりしない。
はじから順番に読むのがいいとおもう。
なんで片方が作品タイトルで、もう一方が著者名なのかというと、谷崎潤一郎のほかの作品を読んだことがないから。
『陰影礼賛』との出会いは中学か高校の教科書だったと思う。当時は装飾過多のキチガイ文章と思っていたが、今になって読み返すとこれがすごい。言葉の意味というものを知らない時分にコレを読まされたことは不幸としか言いようがないが、その存在を知る機会を得られたのは幸福だ。
以下引用。
~その羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色がかろうじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑らかのものを口中にふくむ時、恰(あたか)も室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。~
『陰影礼賛』は晩年の作だから、歳をとってから読めばさらに滋味深く感じられるかもしれない。
もう一方の佐藤賢一は、おもにフランス100年戦争あたりのフランス/ヨーロッパを得意とする歴史小説家なのかな・・・。よく分からない(笑) 史実の隙間を、自分の言葉で埋めていく手法を得意とする作家。並べて登場人物がパワフルで、歴史小説としてだけではなく娯楽小説としても楽しめる作品が多く、文章は平易で読みやすい。テンポのよい弁士の口上を聞いているような心地よさがある。この人の文章の肝は、見知ったはずの言葉が、たまに、思いもよらないかたちで登場するところだ。ジュブナイル小説に『ヴァンパイアハンターD』というのがる。読んだのは小学生のときだったと思う。そこではじめて『だがしかし』という逆接が二つくっついた接続詞を、僕は見た。すごい衝撃だった。テストで書いたら絶対0点だ、と思った。ただ、単なる『だが』と『しかし』よりはるかに強いニュアンスが込められていることは、子供ながらに理解できた。いまでは物語の内容さえ忘れてしまった『D』ではあるが、僕の中では『D』といえば『だがしかし』であり、『だがしかし』を語るにはまず『D』ありきである。話がそれたが、佐藤賢一の小説にはこれに近い驚きがちりばめられている。知っているはずの言葉を、別の角度から再発見する楽しみを与えてくれる作家なのだ。
「何か面白い本知らない?」って聞かれると、大抵このどちらかを勧めている。 ストーリーだけでなく、文章がとても豊かなところがいい。この二つからは、日本語が理解できてよかったな、という快感を味わえる。
で、最近このラインナップに加わったのがGriblockさんの文章。
余計な解説は意味ないので、とりあえずGoだ。
現実の逸話では『ハナミズキ』、ゲームのカテゴリなら『昔話』という作品が、最高にツボなのだがどこにあるかは書いたりしない。
はじから順番に読むのがいいとおもう。
by odenguri
| 2006-04-11 12:08
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